政府・与党が28日、「復興増税」案で合意しました。合意によると税外収入の2兆円上積みをめざし、結果として増税幅は圧縮されるとしています。
国有財産の売却など増税以外の財源をめぐる政府・与党の動きは、当初3兆円、次に5兆円、今回さらに2兆円の上積みで7兆円をめざすなどと迷走状態です。しかし民主党政権は、政府案通りに11・2兆円の「復興増税」を押し通す方針です。
大企業減税がのみ込む
政府・与党が見込む税外収入の中身には問題もありますが、いったいどれだけの財源をつくれるのかさえ明確にできていません。それにもかかわらず、民主党政権は国民への増税だけは決めようとしています。まさに“はじめに増税ありき”の姿勢です。
政府の「復興増税」案は来年度から所得税と法人税に付加税を課すなどして、10年間で11・2兆円の負担を「分かち合う」としています。中身を見ると「分かち合う」とは言葉だけで、実質的にはもっぱら庶民に負担を背負わせる一方的な増税方針となっています。
「復興増税」案によると所得税に10年間、税額の4%の付加税を課して5・5兆円、個人住民税の均等割を5年間、年500円引き上げて0・15兆円を見込みます。さらに、たばこ税の引き上げで2・2兆円、所得控除の見直しで0・9兆円を充当します。
今年度と比べて、サラリーマンや自営業者など個人への増税額は合わせて約9兆円に上ります。
他方で法人税は、まず来年度から国の法人税率を4・5%引き下げます(それによって事業税などを総合した実効税率は5%下がる)。その上で、3年間は税額の10%の付加税を課すことにして2・4兆円の「負担」を求めるといいます。法人税付加税は税率に換算すると2・5%程度です。
ということは大企業向けの法人税は今年度と比べれば税率2%の「減税」になるのが実態です。これは安住淳財務相も28日の国会答弁で認めています。付加税を課す3年がすぎれば税率4・5%の恒久減税となります。
政府試算によると法人税率4・5%引き下げの減税規模は1・2兆円で、法人税率2%は5千億円程度です。経済危機が世界に広がった2008年の前の07年度の税収で見れば法人税率2%で1兆円、4・5%で2・2兆円の大減税となります。
庶民には10年間で9兆円の増税を迫る一方で、大企業には同じ10年間に少なく見積もって10兆円、07年水準に業績が回復すれば18兆円もの減税―。庶民への増税分は大企業への減税分にすっかりのみ込まれてしまう計算で、復興の財源を生み出すどころか大きく財政赤字を拡大します。これは、法人減税を求めている経団連など財界以外の誰が考えても異常です。
減税バラマキやめれば
被災地復興のためにと願う国民の思いをふみにじる「復興増税」に道理はありません。
大企業への減税と、6月に民主、自民、公明などが延長法案を通した大資産家向けの証券優遇税制の延長を中止すべきです。それだけで少なくとも年間1・7兆円、10年間で17兆円の財源を生み出せます。その一部を充てれば「復興増税」の名による庶民増税の必要はなくなります。