野田佳彦政権が参加準備を加速させている環太平洋連携協定(TPP)は、米国の利益に沿ったものであることがますます明らかになっています。
TPPへの参加は日本農業に大打撃となるだけでなく、医療や金融、政府調達など広範な分野で国民生活を損なうもので、強い反対があります。全国都道府県議会議長会なども国民にどんな利害があるのか分からないと、政府の姿勢を懸念しています。野田政権が米国に忠誠を尽くそうとして、国民の反対を押し切って参加を強行することは許されません。
経済と軍事を一体視
オバマ米政権はアジア太平洋重視の姿勢を強めています。クリントン国務長官は今月、『フォーリン・ポリシー』誌への寄稿で対アジア政策の重要性を強調しました。「太平洋地域に、大西洋地域と同じようにじょうぶで米国の利益と価値観にかなう連携や機構の網を張りめぐらせる」ことが米政権の課題だとし、「米国の努力の試金石」と位置づけています。
その柱がTPPです。しかし、現在参加している9カ国には米国以外に経済力の大きい国がなく、このままでは経済圏としての比重は限られ、アジア全域に広げる展望も開けません。主導するオバマ政権は、日本にTPP参加を強く迫っています。それが米国の利益であり、オバマ大統領の再選にもつながるとみるからです。
米国が経済圏づくりと安全保障とを一体視していることは見逃せません。クリントン長官は「アジアの経済成長はこれまでも今後も、在日、在韓米軍をはじめとする米軍事力が保証してきた安全・安定に依存している」と述べました。米軍が経済成長を保証したとの主張は事実に合わず、否定すべきものです。在日米軍は日本の主権を侵害し、基地被害や財政負担の重圧をもたらし、沖縄で経済成長を妨害しています。軍事同盟は他国に脅威を与えるものです。経済成長に不可欠な平和は、軍事力に頼らない自主的な外交努力によってこそ確保されるべきです。
TPPは米国に都合のいい「親米経済圏」です。TPP推進派には、日米軍事同盟を「基軸」とみなす立場にとらわれるからこそ、参加が唯一の道だと映るのです。しかし、それはアジアを分断するものです。TPP交渉が各国の経済主権を尊重した、互恵に基づく普遍的なルールづくりになるわけではありません。
世界2位の経済力をもつ中国はTPPに参加していません。仮に、推進派が描くように将来、中国を含むアジアに広がることになるのなら、TPPはその性格を大きく変えざるをえず、新たな交渉も避けられないでしょう。日本経済がアジアとのつながりを深めるなかで、TPPに参加しないことを恐れる必要はないし、ましてや参加を急ぐべき理由はありません。
財界の脅しも根拠ない
財界は、TPPに参加しなければ「産業空洞化」が進むと国民を脅しています。しかし、米国がわずかな関税を撤廃しても、その効果は少しの円高で吹き飛び、輸出拡大にはつながりません。
輸出依存を転換し、国民のふところを温め、内需主導の経済を築くべきときです。日本経済のあり方を変えるうえでも、TPP参加は「百害あって一利なし」です。