昨年の年末ぎりぎりに民主党内の異論も押し切って消費税増税を決め、年明け早々、政府・与党で「社会保障・税・一体改革素案」を決定しようとしている野田佳彦首相が、年頭の記者会見(4日)で、消費税増税実現への異常な決意を浮き彫りにしました。消費税増税は「大義」であり、「ネバー(決して)、ネバー、ネバー、ネバーギブアップ(あきらめない)」で、実行していくというのです。
消費税増税が「大義」だなどというのはとんでもないごまかしです。公約に照らしても、財政と税制のあり方に照らしても、消費税増税は許されません。
選挙公約に違反して
消費税増税は、自民・公明の政権でも、民主党の政権でも、選挙のたびに大争点になってきた国政上の大問題です。民主党は2009年に自公政権から交代した際、総選挙の「マニフェスト(政権公約)」に消費税増税は掲げず、衆院議員の任期中は消費税を増税しないと主張しました。逆に、2010年の参院選挙で突然消費税増税を持ち出したときには、公約違反だと国民のきびしい審判をあび、議席を後退させました。野田政権が国民の審判もなく消費税増税を持ち出すことに、まったく「大義」がないのは明らかです。
野田首相は「公約違反」の批判をかわすために、消費税増税法案を提出し、国会で成立させたあと、実施前には国民の審判を受けるとしています。昨年末の党内論議では、現在5%の税率をまず8%に引き上げる実施時期を14年4月からと原案より半年遅らせ、衆院議員の任期が切れてから実施を決めるよう取り繕いました。しかし、増税法案そのものは今春に提出し、国会で決めようとしています。法案の決定に参加する閣僚や審議する民主党議員が「公約違反」を批判されるのは免れません。
「社会保障財源」だと称して消費税を増税する「社会保障・税・一体改革」の方針自体、財政や税制のあり方に照らして筋の通ったものではありません。消費税は所得の少ない人ほど負担が重い最悪の大衆課税で、その増税分を社会保障の財源とすれば、福祉に逆行することになります。しかも野田政権の「一体改革」は、年金や医療など社会保障は改悪し、増税の負担は国民に押し付けるものです。そうした筋の通らない増税を、国民にまともな説明もせず押し付けるのにも「大義」がありません。
消費税増税の評判が悪いので、野田政権は、国会議員の定数削減や公務員の削減が増税の前提だといいます。しかし民主党が狙う衆院の比例定数の削減は、現在の選挙制度で唯一国民の民意が議席に正確に反映する制度を後退させ、民意の反映を弱めるものです。国会から民意を締め出し、悪政はよりやりやすくして増税を押し付けるというのでは、それこそ「大義」がないことになります。
まさに暴走そのもの
野田政権がどこから見ても「大義」がない消費税増税を、「ネバーギブアップ」だと、何が何でも押し付けようとするのはまさに異常な“暴走”そのものです。
社会保障の財源は消費税増税でなく、軍事費などムダの削減と、大企業・大資産家への応分の負担などで確保すべきです。「大義」のない消費税増税をやめさせるたたかいが、いよいよ正念場です。