これまでの国会論戦などを通じて、消費税増税計画には何の道理もないことが浮き彫りになっています。暮らしと経済を直撃し、税収を減らして財政危機をさらに深刻にすること、「社会保障のため」は偽りであること―。
消費税に頼らない別の道を真剣に探求する必要があります。
バフェット・ルール
欧米でも経済と財政の悪化は深刻です。その中で、大企業経営者の税負担率が社員より低いなど、富裕層の税負担率の低さが問題になっています。米投資家のウォーレン・バフェット氏が米紙への寄稿で「大金持ちを甘やかすのはやめよう」と訴え、欧州の大富豪らが次々と賛同しました。
富裕層のゆきすぎた減税をやめて応分の負担を求める改革は「バフェット・ルール」と呼ばれ、米オバマ政権が公約にしています。閣僚も「バフェット・ルールは所得格差拡大に対応するために必要」(クルーガー経済諮問委員長)、「米経済は富裕層の減税を負担できる状態ではない」(ガイトナー財務長官)とのべています。
貧困と格差がかつてなく拡大し、経済・財政は富裕層にゆきすぎた減税で奉仕できる状態ではない―。日本も状況は同じです。
大富豪の税負担率が低いのは、所得の大部分を占める金融所得の税率が勤労所得にかかる税率より低いからです。証券税制は欧米の税率30~40%に対して日本は本則20%、優遇10%の低税率で、まさに“株主天国”です。日本の民主党政権は税率10%の証券優遇税制の延長を強行し、所得が低い人ほど負担率が重い逆進的な消費税を増税しようとしています。ますます貧困と格差をひどくする、不公正極まりないやり方です。
大資産家への奉仕をやめ、圧倒的多数の庶民の家計を温めて貧困と格差を是正することは内需の回復にも不可欠の課題です。
「社会保障充実、財政危機打開の提言」で日本共産党は、消費税に頼らず、負担する力が強いものほどより多くを負担する応能負担の原則に立った税制改革を提案しています。証券優遇税制をなくして高額の配当や株取引に欧米並みの30%を課税し、所得税、住民税、相続税の最高税率を引き上げるとともに、「富裕税」の創設を掲げています。
優遇と不公正を正す
高額資産に課税する「富裕税」は日本でも戦後の一時期に導入されたことがあります。提言では5億円を超える株や土地などに、1~3%の低めの累進税率で毎年課税することを想定しています。
国際労働機関(ILO)は雇用と税を分析し、労働者や消費者に転嫁される消費税は実質可処分所得を減らし、労働需要に悪影響を与えるとしています(世界労働レポート2011)。一方で「富裕税」は雇用に悪影響がなく、債務削減に大きな効果を発揮し、適切な再分配手段として機能しうるとのべています。各国に「富裕税」を導入した場合、日本はアメリカに次いで2番目に高い増収効果があるという試算も示しました。
財政危機のもとでも富裕層・大資産家や大企業には減税が繰り返されてきました。日本でも大資産家・大企業を甘やかすのはやめて、優遇と不公正を正す税制改革に踏み出そうではありませんか。