消費税増税
強行すれば取り返しがつかぬ
暮らしと経済に壊滅的
消費税の税率を来年4月からまず8%に、再来年10月からはさらに10%に引き上げる増税は、昨年秋、当時政権にあった民主党が自民、公明と談合して決めたものです。国民の批判をかわすため、実際に増税するかどうかは経済動向を見極めて決めることにしており、安倍政権は8月中旬に発表される国内総生産(GDP)の伸び率などを見て、秋までには判断するとしてきました。その期限は近づいており、安倍政権の内部で増税の実施をめぐり議論が起きているのは、消費税増税の大義のなさと、「アベノミクス」による「経済再生」を売り物にしてきた安倍政権の自信のなさを浮き彫りにするものです。
消費税の税率をまず8%、最終的には10%に引き上げて総額13・5兆円もの負担増を国民に押し付ける増税は、国民の暮らしに大打撃を与えるだけでなく、購買力の低下で日本経済にも壊滅的な打撃を与えます。中小零細業者は、仕入れに含まれる税額も転嫁しきれず身銭を切ることも多いため、売り上げの減少とダブルパンチです。政府が経済動向を見ながら増税の実施を決めるとしたのも、昨年のような「デフレ不況」のもとではとても認められないという批判を無視し切れなかったためです。
実際これまでの消費税増税では、暮らしと経済が深刻な打撃を受けてきました。たとえば1997年4月から消費税の税率を3%から5%に引き上げたさいには、特別減税の終了や社会保険料の引き上げなども重なり、国民の負担増が8・6兆円にのぼったため、経済成長はマイナスに逆戻りし、税収も大幅に落ち込みました。負担増がさらに大きい今回の消費税の増税が、そのとき以上の打撃を暮らしと経済に及ぼすのは確実です。
安倍政権が発足以来、経済の再生を最優先させてきたのは、消費税増税を実施できる条件づくりという側面もあったのは明らかです。実際には「アベノミクス」で株価や物価は上がっても、国民の所得や雇用は改善せず、政府も自信を持って増税に踏み出せないのが現状です。専門家は、所得の落ち込みが続いてきたため、家計へのダメージは前回の増税時より大きいと指摘します。消費税増税を強行する条件はまったくありません。
消費税に頼らない財源を
いま求められるのは消費税増税をきっぱり中止し、国民の所得を増やす景気拡大による税収増と、大企業・大資産家優遇税制の是正で、消費税に頼らない財源対策に転換することです。政府にさえ自信がないのに増税を強行すれば、それこそ取り返しがつかない事態になります。