安倍政権1年
暴走の一つ一つが破綻深める
「内閣支持率急落47%」(共同通信、「東京」など)、「安倍内閣支持率50%に下がる」(NHK)、「内閣支持9%下落55%」(「読売」)、「内閣支持急落、最低の47%」(時事通信)―安倍晋三政権が臨時国会で秘密保護法の成立を強行した直後、メディアが伝えた世論調査の結果です。顕著なのは内閣支持率の低下で、いくつかの調査では50%を割り込みました。北海道、福島、沖縄では、「不支持」が「支持」を上回ります。昨年末の総選挙結果を受け第2次安倍政権が発足して26日で1年。安倍政権の暴走が、矛盾と破綻を深めさせています。
国民との矛盾あらわに
政権に復帰していらい、「強い経済を取り戻す」「経済の再生が最優先」と繰り返した安倍首相が、まず打ち出したのが、大胆な金融緩和と機動的な財政出動、規制緩和による「アベノミクス」でした。首相はそのために日銀総裁を事実上更迭、「2%のインフレ目標」を掲げた黒田東彦(はるひこ)氏を総裁に起用し、規制緩和では「世界一企業が活動しやすい国」をめざすと公言するなど、暴走を繰り返しました。その後も日本の農業に壊滅的な打撃を与える環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加を決めるなど、暴走に歯止めがかかりません。
安倍首相の暴走が国民との矛盾をあらわにしたのは、参院選前に首相が持ち出した憲法96条の改定問題です。本命の憲法9条などの改定に道を開くため、衆参両院の国会議員の3分の2以上の賛成で憲法改正を発議するとした96条を、過半数の賛成で発議できるよう緩和しようとしたのです。96条改定「先行」は憲法の立憲主義を破壊すると、9条改定などへの立場の違いを超えて、反対の世論が沸騰しました。安倍首相が事実上、96条改定「先行」を口にできなくなっているのは、暴走が矛盾と破綻を深めさせた結果です。
民主党政権時代に自民、公明も談合して決めた消費税増税も、安倍政権の矛盾を深めました。来年4月からまず現在5%の税率を8%に引き上げるには経済状況の好転が不可欠だと、なりふりかまわず対策に取り組んだのに決断は10月はじめになり、しかも公共事業の追加や大企業減税など追加対策に迫られました。消費税を増税しながら大企業に減税するのは筋が通らないと、新たな矛盾を抱え込んでいます。
安倍政権が秋の臨時国会に国家安全保障会議(日本版NSC)設置と一体で持ち出してきた秘密保護法は、アメリカといっしょに「戦争する国」をめざす、安倍政権の危険な本性をむき出しにしたものでした。しかしその暴走は、「1960年の安保改定いらい」といわれたほどの広範な国民の反発を招き、強行採決でようやく成立させたものの、安倍首相でさえ「反省」を口にしなければならないありさまです。暴走が引き起こした矛盾と破綻は、ますます深刻です。
自民党政治の崩壊的危機
なぜ安倍政権が暴走を繰り返し、その一つ一つが矛盾と破綻を引き起こすのか。それは「アメリカいいなり」と「大企業奉仕」の自民党政治がすっかり耐用年数を過ぎており、国民の意に逆らった暴走を繰り返すしか手がなくなっているからです。古い自民党型政治の継続か、それともその根本的転換か―安倍政権の暴走と破綻は、二つの道の対決を、いよいよ抜き差しならないものにしています。