2016年3月6日(日)
主張
訴訟和解・首相発言
「辺野古が唯一」固執許されぬ
沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地建設をめぐり、建設阻止のために翁長雄志知事が行った埋め立て承認の取り消しを撤回させようと安倍晋三政権が起こした代執行訴訟で両者が和解しました。和解内容は、新基地工事の中止、国と県がそれぞれ起こした訴訟の取り下げ、解決への協議などですが、重大なのは安倍首相が依然「辺野古が唯一の選択肢」と言い続けていることです。和解により、新基地強行の行き詰まりはいよいよ浮き彫りなのに、辺野古に固執する首相の姿勢は異常です。新基地計画そのものを白紙撤回すべきです。
司法でも矛盾深める国
翁長知事が昨年10月に行った辺野古埋め立て承認の取り消しは、2014年の県知事選や衆院選で明確に示された「新基地建設ノー」の県民の声にこたえた行動です。前知事が県民への公約を踏みにじって行った埋め立て承認こそが、合理的根拠はなく、県民の暮らしと自然環境を壊し、沖縄の基地負担をさらに過酷にするものです。取り消す際も、翁長知事は第三者委員会での慎重な検証を経て結論を出しています。適法で正当な手続きであることは明らかです。
翁長知事の承認取り消しに対し、安倍政権が「違法」だとして撤回を迫る裁判を起こすこと自体一片の道理もありませんでした。しかもやり方が強権的です。地方自治体の権限を国が乱暴に取り上げる代執行の裁判に加え、国民の権利救済が目的の行政不服審査法を悪用して知事の決定を“無効”にし、新基地建設工事を強行してきました。安倍政権のなりふりかまわぬ手法に、行政法の専門家から厳しい批判が上がっていました。
今回の和解に際し福岡高裁那覇支部は、県と国に示した和解勧告文で、国が今後も法廷闘争で「勝ち続ける保証はない」などと指摘しました。法制度を悪用・乱用した安倍政権の手段を選ばぬやり方が、司法の場で通用するものでないことを示したものといえます。
安倍首相や米政府が「辺野古が唯一の選択肢」などと繰り返すことは、まったく筋が通りません。首相があくまで新基地建設推進の姿勢を崩さないというのでは、訴訟を取り下げ、「円満解決」へ協議をする前提そのものが成り立たなくなります。「辺野古が唯一」という思考停止をやめるべきです。
国が当初拒否していた工事中止を含む和解の受け入れを決めた背景に、6月の沖縄県議選や7月の参院選での影響を避ける思惑があったと伝えられています。それこそ新基地建設の強行が、沖縄県民にはとても受け入れ難いものであることを示すものです。県民世論に逆らう新基地建設強行の行き詰まりと破綻はいよいよ明白です。埋め立て中止だけでなく、新基地建設計画の撤回こそが、県民の願いにこたえる道です。
沖縄と全国の連帯さらに
工事中止を政府に受け入れさせたのは、「オール沖縄」の団結したたたかい、名護市での粘り強い運動の力です。和解を受けた協議はこれからです。翁長知事は新基地を造らせないため「ありとあらゆる手段で、信念をもってやっていく」と表明しました。新基地建設を断念させ、普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去へむけ沖縄と全国の連帯したたたかいを、さらに強めることが重要になっています。