しんぶん赤旗日刊紙「主張」

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2016年10月29日(土)

主張

国連で決議案採択

核兵器禁止条約の交渉開始へ

国連総会で軍縮問題を担当する第1委員会は27日、核兵器禁止条約などを交渉する会議を招集する決議案を123カ国の圧倒的多数の賛成で採択しました(反対は日本など38カ国、棄権は16カ国)。「核兵器のない世界」の実現への画期的な動きです。決議案は12月初旬、総会の採択にふされます。

扉ひらく歴史的な一歩に

決議案(「核軍備撤廃多国間交渉の前進」)は、「核兵器を禁止し、完全廃絶につながる法的拘束力のある措置を交渉するために、2017年に国連会議を招集する」としています。会議は、ニューヨークで開催されます。

核兵器を禁止し、廃絶する条約は、被爆者をはじめ世界の反核平和運動が、長年求めてきたものです。国連総会でも禁止条約の交渉開始を求める決議は1996年以来毎年、加盟国の7割の賛成で採択されてきました。しかし米ロ英仏中の核保有五大国は、「ステップ・バイ・ステップ」=段階的な削減が「唯一の現実的な方法」だと反対、前進を阻んできました。

今回の決議案は、この現状を打開するために、オーストリア、メキシコ、南アフリカをはじめとする55カ国以上が、共同で提案したものです。今年8月に、ジュネーブで開催された国連作業部会(OEWG)で採択された報告が、その土台になっています。

核兵器禁止条約はまだ構想の段階で、非核保有国の間にもさまざまな意見があります。ただ、核兵器の禁止=違法化へふみだすことは、極めて大きな意義があります。核兵器の使用や保有などを正当化する根拠が否定されるからです。これまでも化学兵器や生物兵器は法的に禁止され、廃棄されてきました。来年の交渉会議は、「核兵器のない世界」への扉をひらく歴史的な一歩となりうるものです。

国連第1委員会では、核兵器の脅威は重大であり、禁止、廃絶は緊急課題だとする発言が相次ぎました。核兵器禁止が現実の日程に上ったことに危機感を強めた核保有大国は、妨害者としての姿をあらわにしています。とりわけアメリカは、「核抑止力」に影響がでるなどと同盟国を脅しながら、決議に反対するよう圧力をかけました。

アメリカの「核の傘」に頼る安倍晋三政権がこれに屈し、決議案に反対したことはまことに恥ずべきことです。しかも、日本政府が提案した決議案は、ただちに禁止・廃絶にふみこむものでなく、核兵器廃絶を先送りする核保有国の主張に沿ったものでした。これらの態度は、核保有国の代弁者として、世界の反核世論に敵対するものと言わざるを得ません。この姿勢をあらためさせ、被爆国にふさわしい役割を果たさせていくことがますます重要となっています。

世論と運動さらに大きく

核兵器固執勢力は追い詰められ、矛盾を深めています。しかし、抵抗と逆流が強まることも予想されます。それを打ち破る最大の力は世論と運動です。国連作業部会の議長(タイ)は、この間の市民社会の貢献を評価し、「草の根レベル」からの世論喚起をよびかけました。諸国政府と市民の運動の共同は、必ず未来への扉をひらくでしょう。世界で数億を目標にした「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(「ヒバクシャ国際署名」)の発展が強く期待されます

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