福島原発事故  東電の賠償実現こそ国の責任(しんぶん赤旗27日付け「主張」)

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東京電力福島原発の重大事故はいまなお新たな被害を生み続けています。放射性セシウムに汚染された牛肉が出回っていた問題では、出荷停止による農家の損害に加え、牛肉の消費が控えられたことから、被害は流通業界やレストランなどにも及んでいます。

 原発事故による損害を、東電は速やかに全面賠償する責任を負っています。菅直人政権は東電の賠償責任をあいまいにし、税金投入と電気料金への上乗せによる国民負担で、「原発利益共同体」を温存しようとしています。東電救済ではなく、東電に全面賠償を実現させることこそ国の責任です。

東電救済の民自公「修正」

 東電福島原発の事故は原発の「安全神話」をふりまき、批判や警告を無視して原発建設を推進してきた「人災」であることが明らかです。原発から利益を得てきた東電と、その大株主である大銀行などに賠償責任を求め、最大限に負担させることは当然です。

 原子力災害の賠償制度に照らしても東電が「一義的な賠償責任」を負っているのは明らかなのに、政府は電力供給を理由に、東電が損害賠償に必要な資金を「上限を設けず、何度でも」(閣議決定)援助するとしてきました。成立した第2次補正予算にはそのための交付国債発行と政府保証の計4兆円を計上するありさまです。

 民主党は、損害賠償を支援する法案の審議で、自民・公明両党との間で法律に「国の責務」を明記し、新たな公的資金投入の仕組みを設けるなどの「修正」を合意し、26日の衆院の委員会で採決しました。東電の責任を明確にするどころか、東電が負う賠償責任を骨抜きにするものです。

 福島原発の事故から4カ月半たっているのに、東電は賠償責任を果たすどころか、避難を続ける住民や、農漁民、中小企業者などに対する賠償の仮払いを一部にとどめ、被害を受けた人たちの不安と苦しみを加速しています。学校や福祉施設には仮払いを拒否しようとするなど、賠償責任を果たしていません。その姿勢をただちに改めさせ、賠償を実行させることこそ政府の責任です。

 福島原発の事故による損害は数兆円から10兆円を超えるともみられています。全面賠償には、東電の全資産を最大限に賠償にあてることはもとより、株主や債権者などにも負担を求めるべきです。東電の資産は1兆6千億円です。電力業界全体の内部留保や、2兆9千億円が積み立てられている使用済燃料再処理等引当金の取り崩しなども行うべきです。原発メーカーなど、原発から利益を得てきた企業にも負担を求めるべきです。

電気料金値上げも許さず

 政府は損害賠償のため、東電以外の電力会社にも負担金を求めるとしました。しかし、電力会社に一定の利益を保証する「地域独占」と「総括原価方式」のもとでは、賠償のための資金は結局、電気料金として国民に跳ね返ってきます。税金だけでなく電気料金値上げまで、被災者を含む国民に押し付けるのは許されません。

 原発建設を推進し、いままた東電救済にきゅうきゅうとするのでは、被害者への全面賠償は実現できません。政府や「二大政党」が原発事故を招いた「国の責務」を認めるなら、東電に賠償責任を果たさせ、原発から撤退すべきです。

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