関西にも節電要請 財界に被害者の顔ができるか(28日付しんぶん赤旗「主張」)

 0728siro1   政府が関西電力の管内に要請した平日昼間の10%以上節電の期間が25日からスタートしました。

 関東や東北に続く関西での節電要請にも財界は反発を強め、企業の海外移転が増えると言って“脅す”と同時に定期検査を終えた原発の早期再稼働を求めています。

「安全神話の復活を」と

 経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)は25日の記者会見で、すでに日本企業は「何重もの負担」に苦しんでいるとして次のようにのべました。「関西における電力の安定供給が困難となれば、やむなく海外に生産を移転せざるを得なくなる企業が増える」―。

 電力需給の「逼迫(ひっぱく)」の原因をつくったのは、経団連の中枢を占めてきた東京電力の福島第1原発の大事故です。日本共産党や住民が地震や津波による過酷事故の危険を具体的に警告してきたにもかかわらず、「安全神話」に固執して何の対策も取らず、極めて深刻な結果をもたらしました。

 電力会社を筆頭に原子炉メーカーや建設会社、大銀行など財界の中心勢力が丸ごと「原発利益共同体」となって「安全神話」を振りまき、甘い汁を吸ってきました。財界の中枢には事故に対する重い責任があります。もっぱら被害者の顔を装って自分勝手な注文を付けるのは見苦しい限りです。

 関西経済連合会(会長・森詳介関電会長)など関西の財界5団体も21日に政府に緊急要望を突きつけ、定期検査後の原発の「早期再稼働」を求めました。東電原発事故の収束の見通しも立たず、何ら根本対策も取られていない原発を「安全」と言えないことは明らかです。5団体は6月にも関電に原発再稼働を求め、「安全神話を復活させてほしい」とまで言っています。国民の安全より目先の利益を追求する利益優先主義こそ世界最悪レベルの原発事故を引き起こした病根にほかなりません。

 経団連が言う「何重もの負担」とは法人税や温暖化対策、労働規制などです。法人税は、各種の優遇税制によって大企業は欧州並みか、さらに低い負担しかしていません。経団連会長企業である住友化学の2009年度までの7年間の法人課税負担率は16・6%にすぎません。政府に労働規制を緩和させて非正規雇用を増やし、温室効果ガスの排出削減の義務付けを強硬に拒否してきたのが財界です。根拠のない「負担」の羅列は財界の身勝手さを浮き彫りにするばかりです。

安定供給のためにも

 温暖化対策のためにも合理的な節電は大切です。それと同時に本当に必要な電力は確保していく必要があります。

 この点で、電力不足を強調する電力会社の試算には「揚水発電」などの供給力を過小評価するとともに、需要を過大に見積もるなど恣意(しい)的な試算が目立ちます。温暖化防止に取り組む「気候ネットワーク」の試算によると、余裕を持たせるために節電の必要はあるものの、原発全停止の場合でも夏の最大需要予想を供給力が上回っているとしています。

 東電福島原発の事故は、今の原発技術と人間社会が両立しえないことをはっきりと示しました。速やかに原発ゼロの日本をつくるとともに、国を挙げて自然エネルギーの普及に最大限の取り組みを進めることこそ、電力の安定供給にとっても決定的に重要です。

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