雇用の改善 正社員が当たり前の声高く
安倍晋三政権の発足をうけ、世論調査で力を入れてほしい政策のトップが景気・雇用対策です。電機産業大手のような目先の利益にとらわれた正社員のリストラ、待遇がひどく、まともに働いても生活がきびしい非正規雇用の増加など、雇用破壊にたいする国民のがまんは限界に達しています。安倍首相も「デフレ不況脱却にむけて雇用対策を重視する」としています。しかし新政権がめざす雇用対策は、財界の要求にこたえて、労働者をよりいっそう安く使い捨てる方向です。「雇用は正社員が当たり前」の要求をかかげた攻勢的なたたかいが重要です。
強まる規制緩和要求
こうしたなかで財界を代表する経団連は、安倍政権の再登場で勢いづき、労働分野の規制緩和要求を強めています。民主党政権のとき、「これでは労働者は救われない」「骨抜きだ」と批判されながら改定した労働者派遣法、労働契約法、高年齢者雇用安定法などについて、財界にとって痛くもないはずなのに「労働者の就業機会を奪う」と攻撃し、正社員もふくめた雇用の流動化を主張しています。
派遣労働の規制緩和を求める動きは現実化しています。先の国会で改定派遣法が成立したとき、登録型派遣、製造業務派遣を中心に、今後のあり方を検討するという付帯決議がつけられました。これをうけて厚生労働省は昨年10月、有識者による研究会を設置して議論を続けてきました。昨年末に開かれた会議に招かれた人材派遣協会などの業界団体は、登録型派遣も製造業務派遣も必要だと主張するとともに、違法派遣があった場合、派遣先企業に直接雇用されたとみなすという、改定法に新設された「みなし雇用」制度の撤廃まで主張しました。
安倍政権は、経済政策の司令塔として経済財政諮問会議を復活させます。この会議は、とくに小泉政権時代、本来、政労使合意を基軸にすすめられてきた労働行政を支配し、財界に一方的に有利になる労働基準法や派遣法の改定答申を出したり、「市場化テスト」による公務労働の民間払い下げなどをすすめました。これによって雇用破壊が劇的にすすんだことは、広く知られています。この会議の復活による雇用破壊の再現を許してはなりません。
世界では、ILO(国際労働機関)でも、EU(欧州連合)でも「期間の定めのない雇用」が原則です。これによって経済も企業も持続可能になるという考えです。
日本では異常に非正規雇用が増大し、厚生労働省の調査で38・7%というデータがあります(平成22年就業形態の多様化に関する総合実態調査)。いま年収200万円以下の労働者が1000万人を超えていますが、その多くが非正規雇用の労働者です。経済が疲弊し、持続可能性への不安要因の一つがここにあります。
正規も非正規も連帯し
「正社員が当たり前の社会」をめざし、正規も非正規も、若者も高齢者も、立場の違いを超えて連帯して声をあげることが重要です。
安心して働ける雇用を実現するために、ヨーロッパでは当たり前の解雇規制法をつくること、労働者派遣法などの抜本改正、サービス残業の根絶や、世界一長いといわれる労働時間の短縮などを要求して力をあわせるときです。