憲法記念日
96条も、9条も、改悪許さない
奴隷解放も3分の2以上
最近話題になった、アカデミー賞受賞の映画「リンカーン」をご覧になりましたか。リンカーン米大統領が19世紀半ば奴隷解放を実現するため、南北戦争のさなかに憲法改正を実現する話です。権謀術策のすさまじさは映画に譲って、注目したいのは、奴隷解放のための憲法修正13条も、議会の3分の2以上の賛成と4分の3の州議会での承認で成立した事実です。
安倍首相は、憲法を改定するには衆参両院の「3分の2以上」の賛成で発議しなければならないというのは世界でも異常であるかのようにいって、発議要件の緩和を先行させようとしています。しかし、「リンカーン」に見るまでもなく、憲法改定にきびしい条件を設けているのは世界での常識です。それはなにより、権力の活動を縛る憲法は、時の政権の都合で簡単に改正されてはならないからであり、憲法は国の法律のなかで最高の法規だからです。
安倍政権は6年前の第1次政権時代、国会が発議した改憲案を国民投票で決める際の手続きを定めた国民投票法を成立させました。それに続いて今回、改憲の発議要件の緩和を持ち出しているのです。安倍政権の改憲に対する並々ならない執念と、まず手続きからはいる手口は明らかです。
自民党はすでに昨年、「日本国憲法改正草案」を発表しています。天皇を「元首」とし、自衛隊は「国防軍」とし、個別的であれ集団的であれ、「自衛権の発動を妨げるものではない」とするなど、とんでもない内容です。ところが安倍首相は、こうした改憲の中身は隠して“世界で異常”など偽りの口実で、まず改憲の発議要件を緩和しようというのです。まさにそのやり方そのものが立憲主義を覆し、国民の意思を踏みにじるものというほかありません。
自民党の改憲案は、96条の発議要件を緩和するだけでなく、基本的人権は「永久の権利」と定めた97条は削除し、公務員に憲法の尊重擁護義務を定めた99条は「すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない」と変えようとしています。憲法に名を借りて、権力ではなく国民を縛ろうとしているのは明らかではないでしょうか。
改憲への立場こえて批判
改憲の本音をひとまず隠し、まず発議要件から変えようというやり方に、憲法に対する立場は違っても、強い反発の声が上がっています。安倍首相の思惑はそうやすやすと通るものではありません。だいたいまず96条からというのも、9条などの改憲には、国民の間に強い反対があるからです。
96条も9条も改憲を許さない―その声をさらに広げ、憲法を守り生かそうではありませんか。