「(ドイツでは)ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口を学んだらどうかね。ワーワー騒がないで、みんないい憲法と納得して、あの憲法変わっているからね」・・麻生副総理のこの発言、読み返す度に、恐ろしさが込み上げてくるのは私だけではないと思います。問題は、麻生氏がナチス・ヒットラーを肯定的に捉えている点と同時に、彼の認識が事実と全く違うという点です。
当時の歴史を少し紹介すると・・1933年1月のヒトラーの首相就任直後の2月27日夜、ナチス・ヒトラーは国会議事堂放火事件をおこし、それを共産党が犯人だとでっち上げ、翌28日から次々と共産党、労働組合、社民党などへの大弾圧を行います。一ヶ月後の3月23日には、予算を含む法律の制定権を国会から政府に移し、憲法の制約を「解除」し、ヒトラーに権限を集中する「全権委任法」の採決を強行するのです。ワイマール憲法はこうしたファッショ的な行為の中で「機能停止」するのです。 この国会放火事件の犯人が共産党だとするでっち上げは、その後ライプチヒ裁判において、被告の一人であるブルガリア共産党員のディミトロフなどの法廷闘争のなかで、共産党放火説はでっち上げであること、放火がナチス関係者の仕業であることが明らかになり、無罪を勝ち取ります。
ワイマール憲法の機能停止は、「誰も気づかないで」すすんだどころか、無法な暴力と弾圧の嵐のなかで強行されたのです。この国会放火事件は、当時ドイツ共産党が躍進する中で、共産党を弾圧・非合法化することを通じて民主主義を根絶やしにしようとする狙いの中で起きます。麻生発言の「誰も気づかないうちに改憲」ではなく、「気付いて反対する勢力を弾圧し、誰も反対できないようにして改憲」を強行したのです。麻生発言は、彼だけでなく安倍内閣の本性を浮き彫りにするものです。安倍内閣が「国民の気持ちとねじれたままの内閣」であることを示しています。(岡山 武田英夫氏のブログから転用)