民主、自民、公明の3党が、東日本大震災の復興財源を調達する復興債の償還期限(元本の返済期限)を、政府案の10年から25年に延長することで合意しました。
これにともなって、所得税や住民税など国民への増税期間も10年から25年に引き延ばされます。
増税期間を延長すれば単年度の税負担は圧縮されます。しかし、個人や中小業者に総額8・8兆円の増税をかぶせる一方で、大企業には平年度で1・2兆円の法人税減税を恒久化する不公平な枠組みは変わりません。
社長の心は痛まないか
国民への増税は四半世紀に及びます。もはや「臨時」増税とは呼べません。
民主党政権は当初3年は法人税にも「付加税」を課すことで「負担を分かち合う」としています。ところが、付加税といっても法人税率を4・5%引き下げる恒久減税を実施した上で税率を2・5%「付加」するだけです。付加税を課す3年間も実際は毎年2%(約5千億円)の減税であり、その後はさらに4・5%、年間1・2兆円の大幅な減税になります。
庶民が25年も払い続ける増税分は7、8年分の大企業減税で全部消えてなくなります。誰が見ても不公平です。何より、これでは財源は1円もつくれず、赤字を増やすだけです。復興増税に一片の道理もないことは明らかです。
大企業減税は経団連の強い要求です。経団連は復興財源でも「(法人税の)純増税を行うことは絶対に容認できない」(「税制改正に関する提言」)と政府にくぎを刺しています。復興財源を生み出すはずの復興増税がこんな奇怪な姿になったのは、民主党政権が復興よりも財界の身勝手を優先させたからにほかなりません。
資本金10億円以上の大企業の内部留保は257兆円、上場企業の現金・預金など手元資金は65兆円に達しています。上場企業は株価を押し上げるための「自社株買い」に今年度上半期だけで6700億円も投じました。千億、百億単位のお金を闇に転がしたオリンパスや大王製紙の退廃は大企業の金余りの象徴です。大企業減税の必要は、どこにもありません。
財政危機のもとで復興財源をどう生み出すかが問われているときに、ひとり大企業だけが減税を享受する―。社長・経営者の心は少しも痛まないのでしょうか。
復興債の償還期限を25年とするなら庶民増税は1年当たり3500億円ほどになる計算です。会計検査院が昨年度の税金の無駄遣いなどで指摘した金額は、これより多い4283億円に上りました。「思いやり」予算など米軍関連経費の3000億円、政党助成金の320億円をやめれば生み出せる規模です。証券優遇税制の延長を中止するだけで5000億円の財源をつくれます。庶民増税の必要は、まったくありません。
原発利益共同体にも
地震と津波の復興財源は米軍や財界がらみなど古い政治の枠組みにメスを入れれば確保できます。
原発災害の除染と賠償にかかる膨大な費用は、まず東京電力が負担し、電力業界の「使用済み核燃料再処理等引当金」などの積立金も基金として活用すべきです。原子炉メーカー、大銀行などの「原発利益共同体」にも応分の負担を求める必要があります。